タイで進む国民向け生成AI活用計画「TH-AI Passport」は、15歳以上の500万人を対象に、複数事業者のAIツールを共通基盤から使えるようにする構想だ。報道で確認できた事業の対象、利用形態、契約見直しの内容を整理する。
確認状況:複数の報道機関で主要事実を確認しています。現時点で、発表主体による公式情報は確認できていません。
15歳以上の500万人にAIツールへの入口を用意する構想
TH-AI Passportは、タイのデジタル経済社会省が進めるAI人材育成・デジタル技能向上の事業として報じられている。対象は15歳以上のタイ国民500万人で、学生、就労者、公務員を含む幅広い利用者が、生成AIのPro級サービスに触れる機会を設ける計画とされる。
利用者は一つのプラットフォームを通じ、複数の提供企業による生成AIツールを利用する想定だ。単に利用権を配るのではなく、学習や仕事でAIを扱うための環境を組み合わせることが事業の枠組みとなっている。報道では、利用期間は1年と説明されている。
一括支払い案から「実際に利用した人」基準へ
事業をめぐって注目されてきたのは、政府から受託事業者への支払い方法である。当初は約16億2100万バーツ規模の計画として伝えられたが、その後、利用者数に応じて支出する「Pay Per Active User」方式へ契約内容を見直す方向が示された。
2026年7月22日付のSpring Newsは、実際に利用した人を対象に、1人当たり月額約25バーツを支払う案を報じた。登録だけで費用が発生するのではなく、定められた学習や利用の条件を満たした人を支払い対象とする考え方で、固定額を前提とした方式とは異なる。
契約見直しをめぐる技術面と個人データの論点
受託側の説明としては、利用者が同時に接続する状況にも対応できるシステム能力を確保する方針や、個人データ保護法(PDPA)に沿ってデータを扱う考えが報じられている。一方で、実利用者の定義や、費用算定の透明性を求める指摘も報道で続いている。
AIサービスの利用規模が大きい公共事業では、アクセス権の配布数と実際の利用状況をどう区別するかが支出管理に直結する。TH-AI Passportでは、支払いを実利用と結び付ける契約変更が、事業の説明責任を左右する論点となっている。
9月開始の記述は独自に確認できず
提供資料には、契約上の期限である2026年9月1日までのサービス開始を目指すとの記述がある。しかし、確認できた独立報道は7月下旬時点で登録開始見込みを伝える内容にとどまり、9月1日の開始、法的確認の完了、開始手続きの最終段階入りを裏付ける発表主体の公開情報は確認できなかった。
そのため本記事では、開始日を確定した出来事としては扱わない。現時点で確認できるのは、500万人規模のAI利用支援計画があり、政府支出を実利用者数に連動させる方式への転換が報じられている点である。

